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INTERVIEW 専門の先生に聞いてみました。

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【第6回】喘息治療は慢性的に起きている「気道の炎症」をしずめるために、調子がよいときも、使い続けることが大切。

宮川 武彦 先生 宮川医院 院長

春は、何だかいつも調子が悪いな・・・花粉や黄砂が飛ぶという春独特の気候や、新しい仕事や会社など慣れないところでの生活による疲れ、ストレスなどが調子をくずす原因になることがあります。

30年以上にわたって吸入ステロイド薬による抗炎症治療を行ってこられた宮川先生に、吸入ステロイド薬がいかに大切な薬剤かを教えていただきました。

コメンテーター

宮川 武彦 先生

宮川医院 院長

 

花粉や黄砂、春の環境変化は喘息患者さんの症状に影響する

春本番を迎えると、スギ花粉に加え、日本各地に大陸から風で黄砂が運ばれてきます。どちらも喘息患者さんの症状を悪くしますので歓迎されないものですが、花粉の場合、飛散量が少ない年は喘息への影響も少なくて、大量に飛んだ年は調子をくずす患者さんが増加します。しかし黄砂が飛ぶと、量には関係なく7~8割の喘息患者さんが不調を感じるようです。

咳や喘鳴(ぜんめい)など喘息の症状は、炎症によって過敏になっている気道に刺激が加わると起こります。気道は先端(肺の奥のほう)にいくほど細くなっているので、粒子が小さいものほど奥まで届きやすく、気道を刺激します。黄砂の粒子はたいへん小さく、花粉のおよそ10分の1しかありません。そのため、黄砂は吸い込む量に関係なく喘息患者さんの気道を刺激します。

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また黄砂は、大陸の内陸部の砂漠から沿岸部の工業地域の上空を通って運ばれてくるため、その間に化学物質などが付着して日本に飛来します。粒子の細かさだけではなく、黄砂に付着した化学物質も刺激の原因となっています。

こうした自然の影響のほか、新年度・新学期が始まるこの時期は環境の変化も大きく、緊張やストレス、慣れない仕事での疲れなどから、症状が悪くなる方も少なくありません。

でも、ここでお話しておきたいことがあります。それは、花粉や黄砂が飛んでも、疲れやストレスがたまっても、日頃から吸入ステロイド薬をきちんと使って炎症の治療をしている患者さんは、症状が悪くなることが少ないということです。

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吸入ステロイド薬で、慢性的に起きている「気道の炎症」をしずめる

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それではなぜ、吸入ステロイド薬をきちんと使うと、調子のよい状態を保つことができるのでしょうか?

喘息患者さんの気道は、症状がなく安定しているときでも気道に「炎症」が起きていて、刺激に対して常に過敏になっています。そのため、花粉や黄砂、ホコリ、タバコの煙などを吸い込んだり、天候の変化、かぜやインフルエンザ、疲労などが加わると、それが刺激となって気道が縮み、空気の通り道が狭くなって、咳込んだり息苦しくなったりします。

発作治療薬は狭くなった気道を広げる効果があるので、こうした症状が起きたときに発作治療薬を使えばおさまります。しかし、発作治療薬には炎症をしずめる働きはないので、症状がおさまっても喘息の根本である「気道の炎症」は残ったままです。

それではなぜ、吸入ステロイド薬をきちんと使うと、調子のよい状態を保つことができるのでしょうか?

喘息患者さんの気道は、症状がなく安定しているときでも気道に「炎症」が起きていて、刺激に対して常に過敏になっています。そのため、花粉や黄砂、ホコリ、タバコの煙などを吸い込んだり、天候の変化、かぜやインフルエンザ、疲労などが加わると、それが刺激となって気道が縮み、空気の通り道が狭くなって、咳込んだり息苦しくなったりします。

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発作治療薬は狭くなった気道を広げる効果があるので、こうした症状が起きたときに発作治療薬を使えばおさまります。しかし、発作治療薬には炎症をしずめる働きはないので、症状がおさまっても喘息の根本である「気道の炎症」は残ったままです。

一方、吸入ステロイド薬には炎症をおさえる効果があるので、気道の炎症をしずめ、刺激が加わっても症状を起こすことのない安定した状態にみちびくことができます。また、症状をくり返していると、しだいに気道の粘膜が荒れ、気道の壁も厚く固くなり、喘息は重症化していきます。医学用語ではこれを「リモデリング」といいますが、吸入ステロイド薬をきちんと続けていると、リモデリングも防ぐことができます。

最近では吸入ステロイド薬の種類が増えてきました。その1つが、吸入ステロイド薬と気道を広げる作用をもつ長時間作用性β2刺激薬を1つの吸入器に一緒に配合した薬剤です。効果の出かたには患者さんによって差がありますが、配合剤は効果の発現が早く、患者さんが効果を実感しやすいという特徴があります。当院でも年々、配合剤を使うことが増え、現在では7割の患者さんが配合剤による治療を行っています。

 

吸入ステロイド薬は毎日続けて使うことが大切

以前、吸入ステロイド薬を規則的に使っていた患者さん約400人と不規則な使い方をしていた患者さん約150人、吸入ステロイド薬を使っていなかった患者さん約100人で、吸入ステロイド薬の使用状況によって患者さんの調子がどのように違うのかを調べたことがあります。この調査では患者さんに、「すごく調子がよい」「調子がよい」「まあまあの調子」「ちょっと調子が悪い」「調子が悪い」の5段階でお答えいただきました。結果は、規則的に使っていた患者さんでは「すごく調子がよい」「調子がよい」と答えた人が60%に上り、「ちょっと調子が悪い」と答えた人は12%でした。

吸入ステロイド薬の使用状況と調子

一方、吸入ステロイド薬を使っていなかった患者さんで「ちょっと調子が悪い」と答えた人は39%、不規則な使い方をしていた患者さんでも同じく39%の人が「ちょっと調子悪い」と答えていました。この調査結果から、吸入ステロイド薬を使っているかどうかはもちろん、吸入ステロイド薬を“規則正しく”使うことが、症状を起こさず調子のよい毎日を送るために大切だということがおわかりいただけると思います。もう少し厳しくいうと、吸入ステロイド薬の不規則な使い方をしている人は使っていない人とほとんど同じ状態になるということです。

一方、吸入ステロイド薬を使っていなかった患者さんで「ちょっと調子が悪い」と答えた人は39%、不規則な使い方をしていた患者さんでも同じく39%の人が「ちょっと調子悪い」と答えていました。

この調査結果から、吸入ステロイド薬を使っているかどうかはもちろん、吸入ステロイド薬を“規則正しく”使うことが、症状を起こさず調子のよい毎日を送るために大切だということがおわかりいただけると思います。もう少し厳しくいうと、吸入ステロイド薬の不規則な使い方をしている人は使っていない人とほとんど同じ状態になるということです。

吸入ステロイド薬の使用状況と調子

 

「吸入ステロイド薬は危険」は間違い

吸入ステロイド薬は喘息治療になくてはならない薬剤ですが、残念ながらその一方で“ステロイド”への抵抗感や誤解が残っています。私も日々の診療で、「吸入ステロイド薬はステロイドが入っているけれど、大丈夫なのでしょうか?」と、ほぼ毎日のように尋ねられますが、「内服や注射と違って、吸入ステロイド薬では全身性の副作用はほとんどありません」とお話しています。

喘息の治療では「吸入器」という専用の器具を使って薬を吸い込み、薬を気道に直接届けます。そのため、必要なステロイドの量は内服と比べるとごく微量ですみます。肺に届いたステロイドのうちいくらかは全身に吸収されますが、その量も大変少なくてすみます。また、吸入するときに一部が口の中に付着しますが、うがいをすればほとんど除去されてしまいますし、消化管から体内へ吸収されても、大部分は肝臓で分解されてステロイドとしての働きを失います。

私が喘息治療に吸入ステロイド薬を使い始めてからもう30年以上経ちますが、全身性の副作用が問題となった患者さんは経験していません。

 

調子がよいときでも、自分の判断で吸入ステロイド薬をやめないで

私は患者さんに「喘息は治らない病気です」と言うのですが、そうすると多くの方に嫌な顔をされてしまいます。でも、「治らない」というのは、「ずっと症状が出たまま」ということではありません。吸入ステロイド薬を使って気道の炎症をしっかりおさえれば、健康な人と変わらない生活を送ることができます。日常生活はもちろん、吸入ステロイド薬で治療しながらスポーツ選手として活躍している人もたくさんいます。

ただ、調子がよくなってくると、吸入ステロイド薬の使用を忘れがちになったり、自分の判断でやめてしまう人がたくさんいます。しかし、先にご紹介した調査結果のように、不規則な使用では十分な効果は得られません。また、吸入ステロイド薬をやめてしまうと、おさまっていた気道の炎症がふたたび元の状態に戻ってしまいます。

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喘息だから症状があっても仕方がないとあきらめている方、自分では調子がいいと思っていても実は発作治療薬を使っているという方、自分の判断で吸入ステロイド薬をやめた後、ときどき季節の変わり目などに調子をくずすことがある方は、一度、かかりつけの先生に相談してください。

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>第13回 お薬をやめたくなっても気持ちを切り替えて、調子が良い時もしっかりお薬を続けましょう。

>第12回 特別編 対談 力富先生「喘息は症状が治まってからが勝負です」平松先生「目標を高くもって、治療しましょう」

>第11回 喘息について、検査について、正しく理解することが治療へのチカラになります。

>第10回 正しい治療を気長に続けることが何より大事。あなたの現在と将来の健康のために毎日の吸入を続けましょう。

>第9回 自分の喘息の状態をきちんと把握して、医師に伝えることが重要です。早めにきちんと炎症の治療をすることで症状をなくしましょう

>第8回 風邪などが原因で症状が出やすいこの季節、毎日の気道炎症の治療が重要

>第7回 気道が敏感な状態がよくなるには、時間がかかります 症状がおさまっても治療をやめずに、抗炎症治療を続けましょう

>第5回 喘息治療薬をきちんと続けて毎年の花粉の時期にも症状をコントロールしましょう

>第4回 喘息は、「生活環境病」 でも、きちんと治療すれば、環境に左右されにくくなります

>第3回 喘息は「動く病気」。適切な治療を続ければ、よい方向に動く

>第2回 夏は症状の落ちつく季節 それでも、喘息は休んでいません

>第1回 喘息の「誤解」をなくし、症状ゼロを目指しましょう