喘息(ぜんそく)の正しい知識と治療についての総合サイト

監修:国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王病院アレルギー内科 足立 満 先生

INTERVIEW 専門の先生に聞いてみました。

【第12回】特別編 対談 力富先生「喘息は症状が治まってからが勝負です」平松先生「目標を高くもって、治療しましょう」

力富 直人 先生 長崎呼吸器リハビリクリニック 院長 平松 哲夫 先生 平松内科・呼吸器内科 小牧ぜんそく睡眠リハビリクリニック 院長

コメンテーター

力富 直人 先生
長崎呼吸器リハビリクリニック 院長

平松 哲夫 先生
平松内科・呼吸器内科 小牧ぜんそく睡眠リハビリクリニック 院長

喘息は苦しいときだけ、お薬を使えばいいと思っていませんか?
日々の管理をきちんと続けることで、
徐々に発作の回数を減らし、より快適な生活を送ることができるようになります。
日々の管理の大切さと普段の生活でできる呼吸リハビリテーションについて
お二人の先生にうかがいました。
(文中、敬称略)

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喘息ってどんな病気?

力富 喘息の典型的な症状といえばゼーゼーヒューヒューという息苦しさが挙げられますが、喘息で初めて受診する方の多くは「風邪でが長引いている」と訴えて来院されます。しかし、よくうかがうとだけではなく「呼吸が苦しい」「夜から明け方にかけて、がひどくなる」など喘息の典型的な症状があります。

平松 夜間や朝にがひどくなり、数週間~1ヵ月以上が長引くようならたかがと思わず、また自分は気管支が弱いから仕方ないと判断せず、一度医療機関を受診しましょう。喘息以外にも呼吸器の病気が隠れていることもあるので、まず、レントゲンや肺機能などの検査を受けられる医療機関を受診してみましょう。

力富 喘息アレルギー性の炎症気管支の粘膜に生じ、気管支の内側が腫れて空気の通り道が狭くなる病気です。ゴムホースの内側が膨らんで、管が狭くなる様子をイメージするとわかりやすいですね。喘息の診断では血液検査や肺機能検査などをおこないます。また、喘息では、力いっぱい息を吐き出したときの最大の速さである「ピークフロー」を測ることが大切です。炎症によって気管支が狭くなると、空気が通りにくくなり、ピークフローの値が下がるので喘息の状態を判断できるわけです。

平松 炎症とは傷のように赤くジクジクとして、少し触れただけで痛いような敏感な状態を想像するとわかりやすいと思います。ただし、スリ傷は治療をしてある程度時間が経過すると勝手に治っていきますが、残念ながら気管支炎症は治療をやめてしまうと、そのまま炎症が残ってしまうことがわかっています。気管支内部の炎症を直接、目で確かめることは難しいので、それを間接的に少しでも近い形で知ることが喘息と付き合う中で最も大切なことです。症状だけを基準にするとどうしても甘くなりがちなため、先ほどお話にあったピークフローの測定や一般的な肺機能を検査します。また、最近はオシレーション法による気道抵抗の検査や吐く息の一酸化窒素なども簡単に測れるようになってきており、それらを組み合わせることでより近い形でわかるようになってきました。

治療をキチンと続けて、「症状ゼロ」の生活へ

力富 喘息の治療薬には、今苦しい症状をとる「発作治療薬」と発作が起こらないようにコントロールする「長期管理薬」の2種類があります。例えば、ボゥボゥ燃えている火事を消す“消火器”の役割を果たすのは「発作治療薬」、火事が鎮まった後もくすぶり続けている火種が再発火しないようにチョロチョロ水をかけて抑えるのが「長期管理薬」です。

平松 長い間、喘息に悩まされている患者さんの中には、「とりあえず、今苦しい症状が無くなれば十分」とする方も多いと思います。しかし一見、症状が治まったようでも、まだまだ喘息炎症の火種がくすぶっているのです。治療中止後すぐに悪化しなくても、ダニや花粉などのアレルギーがあるものに接触したり、風邪をひいたりすると、とたんに症状がぶり返してくることをよく経験します。

力富 私はよく「症状が治まってからが勝負ですよ」という説明をします。私や平松先生が研修医だった時代は、呼吸器病棟に入院される方の3分の1は喘息患者さんで占められていました。入院が当たり前の病気だったんですね。当時は長期管理薬があまりなく、発作が起こってから治療することが精一杯で、発作の火種は放っておくほかありませんでした。でも、今はとても良い長期管理薬があるので、発作の火種を外来通院で治療ができるようになり、入院される患者さんはとても少なくなりました。そればかりか、発作の回数を徐々に減らし無症状の期間を長く維持できるようになっています。

平松 喘息というのは、高血圧や糖尿病と同じ慢性疾患の一つです。高血圧や糖尿病患者さんはこれといった症状がなくても、血圧の値や血糖値を適正な値に近づけることを目標に治療薬を服用されています。しかし喘息の場合は、最初に風邪のような症状や苦しい呼吸困難を経験することが裏目にでてしまい、多くの方が症状が軽くなっただけで満足してしまいます。本来は、喘息治療でも他の慢性疾患と同じく症状のない状態を長く保ち、ピークフロー値を適正な範囲に保持することが大切なのです。ピークフロー値は血圧や血糖値と同様に日々変化します。しかし医療機関には毎日行きません。だからこそ、自分の体は自分で管理する必要があると考え、自分の状態を知るためにピークフローの測定は必要と考えていただくとわかりやすいでしょう。毎日の治療を続けることで炎症を抑え、適正なピークフロー値をキープすれば「症状ゼロ」で過ごす生活を送ることも可能となり、結果として治療のステップダウンにもつながると思います。

力富 ご自身の病気について知ることは大切ですね。ピークフロー値が標準の半分以下でも症状が無いからと長期管理薬を中断してしまっては、ぶすぶすとくすぶる炎症の影響で徐々に慢性的に気管支粘膜の壁が厚く、狭くなる「リモデリング」が生じてしまいます。こうなってしまうと、なかなか気管支が元の状態に戻らず、治療は難しくなってしまいます。苦しいときだけ乗り切れば、それでおしまいではなく、なぜ長期管理薬が必要なのかを理解してください。

タバコが主な原因の「COPD」と合併することも

力富 最近、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」と喘息の合併が注目されています。喘息アレルギー性疾患であり、一方のCOPDは主にタバコの長期的な刺激が原因で発症する病気ですが、どちらも気管支内側の粘膜に炎症が生じ呼吸困難やが主な症状です。一番の違いは喘息が若くても発症する疾患であるのに対し、COPDは主に長年にわたって喫煙してきた中高年層の疾患であることです。また、喘息が就寝時など安静状態でも発作が起こるのに対し、COPDは労作時、つまり動いたときにや息苦しさが起こります。「喘息は夜の病気、COPDは昼の病気」と考えていただくとわかりやすいでしょうか。

平松 近年、喘息で亡くなられる方は激減しました。COPDは治療の選択肢は増えてきましたが、まだ死亡数は増加傾向にあります。私の病院に通院しているCOPD患者さんの3~4割に喘息との合併が認められるため、その方達にはCOPDの治療を行うときに喘息の合併を意識して治療を行っています。

力富 COPDの治療で主に使われるお薬は、気管支拡張薬です。喘息との合併があるときには吸入ステロイド薬も必要です。薬物療法以外に栄養管理や運動療法も必須です。COPDでは、病気が進行すると身体を動かしたときに息苦しさが出現するため、次第に運動量が減ってしまいます。その結果、筋力が衰え、強い倦怠感や気分の落ち込みを経験します。これを予防するためにも、運動量の低下の原因である息苦しさを改善すると同時に、筋力・体力の回復が重要なのです。お薬も重要ですが、とにかく運動療法や腹式呼吸による呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)が大事なポイントだと思います。

呼吸リハビリテーションで当たり前のことを当たり前にできる生活に

平松 呼吸リハは、純粋な喘息では、最近適度な運動が発作の頻度を減らすという報告などが出てきていますが、一般的ではありません。しかし、COPDでは薬物とともに治療の中心的役割を持っています。また、先ほどの話にあった喘息とCOPDの合併であるACOSのガイドラインが最近出され、呼吸リハに関してその必要性が述べられています。呼吸リハの実際としては、エルゴメータ(自転車のペダルを踏む運動器)やトレッドミル(ウォーキングマシン)などを使った有酸素運動やおもりなどを使った筋力トレーニングを中心とした運動療法と「口すぼめ呼吸」「リラクゼーション」など息切れを改善するための呼吸法との喀出を楽にする排トレーニングなどが基本となります。インターネットでご自宅周辺の地図を検索して、一人ひとりに適正な距離の「ウォーキング・ルート」を患者さんと一緒に相談して歩いていただく、といったことも効果的でしょう。

力富 それは良いですね。呼吸リハの目標は、運動能力の向上により日常生活がラクになりQOL(生活の質)が改善することです。COPDの症状が進むと歩いたり、お風呂に入る、洗濯物を干すというような日々の生活に欠かせない動作ですら辛くなります。そういう場面で呼吸法を取り入れたり、どう動くかを工夫しながら、日常の生活動作を改善していくことも大切です。

平松 ご自宅の二階に行く階段を登るのが辛くなる方もいらっしゃいます。家の二階にあがれないだけでも自由に動ける空間が減りますからね。自分の生活空間の中で動ける範囲や、できることを拡げる努力が必要です。人間は自分の「必要度」に応じてしか動きません。息切れが強くなればなおさらです。家庭や職場での役割や責任を果たすために、また趣味のため活動度を拡げたいという気持ちが呼吸リハを続ける良い動機になると思います。

力富 どうやって呼吸リハを続けるかについては、私達の間でもよく話題になります。呼吸リハビリで運動すること自体が最初は息切れもするし、あまり楽しい動作ではありませんからね。一人ではなかなか続けることが難しいと思います。しかし、外来で呼吸器リハに通ううちに「リハ仲間」ができ、皆でワイワイ言いながらであれば続けやすいですよね。

平松 ええ。リハビリ室でのトレーニングメニューが向上していくのも楽しみですが、何よりもリハビリ仲間ができることで「動かなくちゃ」「普段から動こう」という励みや動機付けになります。定期的にリハビリ評価を行って、目標を決めるのも意欲向上に効果的ですね。

力富 重症の患者で、呼吸リハビリの効果がでて、青信号のうちに横断歩道を渡り切れるようになって、他の人頼みだった買い物に行くことができて嬉しい!と言われた患者さんがおられました。医療者に言われたから取り組むのではなく、自分の力で歩く距離が延びた、何かができるようになったという達成感が大切ですよね。一昔前までCOPDは発症したら終わり、と考えられていました。しかし、今はたとえ治療開始が遅くても、薬物療法や呼吸リハなどQOLの改善のためにやれることが沢山あるのです。

平松 本当にそうですね。症状を完全になくすことは難しいかもしれませんが、生活のなかで笑顔が増えるような工夫や手段はどの段階からでもあります。喘息にもCOPDにもせっかく良いお薬や方法があるのですから「これくらいは仕方がない、我慢しよう」ではなく、「食べる、寝る、遊ぶ」という当たり前のことを当たり前にできるように、治療の最終目標を高くもって、薬物療法と自己管理に取り組んで欲しいと思います。

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