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監修:国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王病院アレルギー内科 足立 満 先生

INTERVIEW 専門の先生に聞いてみました。

【第2回】夏は症状の落ちつく季節 それでも、喘息は休んでいません

東田 有智 先生 近畿大学医学部呼吸器・アレルギー内科 教授

コメンテーター

東田 有智 先生
近畿大学医学部呼吸器・アレルギー内科 教授

喘息の原因は「気道の炎症」。
ご存じの方もいらっしゃると思います。
でも、炎症って本当はどういうことなのでしょう?
症状が落ちついているときは、炎症もなくなっているのでしょうか?
多くの喘息患者さんを診療しておられる東田先生に、
気道の炎症とその治療についてわかりやすく解説していただきました。

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喘息患者さんは気温の変化が苦手

喘息の患者さんにとって一番苦手なことは気温の変化、特に冷えることです。ですから、気温の高い夏場は症状が比較的落ちついている方が多いと思います。
しかし、外は蒸し暑くても、クーラーのきいた室内に入ると咳き込んでしまう。これは、冷たい空気が気道に流れ込んで、気道がその温度変化についていけないために起こります。
また、クーラーをこまめに掃除するというのはなかなか難しいもの。クーラーからの冷気とともに出てくるダニやホコリも、喘息患者さんの気道を刺激します。

症状がなければ、喘息は一休み?

それではなぜ、クーラーの冷たい空気やホコリで喘息の症状が出るのでしょう?
それは気道に「炎症」が起きていて、刺激に過敏になっているからです。
とはいえ、ひとくちに「気道の炎症」と言われても、ピンとこない方もおられると思います。例えばやけどをしたり、転んで膝をすりむくと、皮膚が赤くなってただれてしまいます。簡単にいうと、この状態が炎症です。もちろん、気道はやけどをしたり、すりむけたりしませんが、喘息患者さんの気道を内視鏡で見ると、赤くただれています。
その傷口に刺激物があたったらどうなりますか?きっと、痛くて体がぎゅっと縮こまるでしょう。実は喘息の気道でも、これと同じことが起きています。冷たい空気やタバコの煙、ダニやハウスダスト、ペットの毛、あるいは風邪、疲労、ストレスなどは、炎症を起こした気道にとって"傷口にあたった刺激物"と同じ存在。痛いと体が縮こまるように、気道も刺激が加わるとぎゅっと狭くなって、空気の通りが悪くなります。これが咳などの症状が起こるメカニズムです。
では、症状がないときは、炎症もなくなっているのでしょうか?人によって差はありますが、症状がなく、喘息が一休みしていると思われるときでも、気道の炎症は残っています。
「喘息が治る」というのは、「気道の炎症がなくなる」ということ。「症状がない」のは、喘息が治ったということではないのです。

気道の炎症を抑える強い味方—それは「吸入ステロイド薬」

喘息の治療では何よりもまず、気道の炎症をおさえることが大切です。そのための力強い味方が「吸入ステロイド薬」。ステロイドは炎症をおさえる作用が強く、炎症が関係しているさまざまな病気の治療に使われています。
けれども一方で、「ステロイドは副作用が強いから使いたくない」という患者さんの声もお聞きします。
しかし、喘息の治療には「吸入器」という専用の器具があります。これを使って薬を吸い込むと、気道に直接薬が届きます。そのため、必要なステロイドの量は内服や注射に比べてごくわずかで、全身的な副作用が起こることはほとんどありません。

吸入ステロイド薬は、症状がおさまっているときでも続けることが大切

先ほどお話ししたように、症状がおさまっているときでも気道には炎症が残っています。ですから症状がないときでも、吸入ステロイド薬は使い続けることが大切です。私は長年、喘息治療に携わってきましたが、多くの患者さんが"喉もと過ぎれば"と思っていらっしゃいます。症状がおさまってくると、吸入ステロイド薬を使わなくなってしまう患者さんが少なくありません。
喘息だから運動ができない、海外旅行に行けない、学校を休む日があるのは仕方ない、というのは誤解です。喘息は、きちんと治療すれば健康な人と変わらない生活を送ることができます。がまんしていることがある、普通の生活ができないというのは、気道の炎症がしっかりおさえられていないからです。
吸入ステロイド薬で気道の炎症がおさえられていれば、冷気やホコリが入ってきても、咳が出たり、気道が狭くなって息苦しくなることは少なくなります。また最近は、気道を広げる作用のある薬(長時間作用性β2刺激薬)を一緒に配合した新しいタイプの吸入ステロイド薬も登場しています。

目標は、「何をしても症状がない」ということ

吸入ステロイド薬が使われるようになって喘息の治療は大きく進歩しました。気道の炎症を完全に取り除くのはなかなか難しいですが、吸入ステロイド薬をきちんと使えば、炎症をかなりのところまでおさえられるのは確かです。
しかし今でもまだ、症状がひどくて横になって眠れず、毎晩椅子で寝ているというような患者さんが受診されることがあります。
私たちが診療の際に基本としている「喘息予防・管理ガイドライン」(2009年、日本アレルギー学会)では、「健康な人と変わらない生活を送ること」が治療の目標に掲げられています。
症状があるのは仕方がないとあきらめている方、症状が出たときだけ薬を吸入している方に、「それは違います」とお伝えしたい。発作を起こさないように運動や旅行をがまんしている方にも、"じっとしていて症状がない"のと"何をしても症状がない"のは大きな違いだとわかってほしい。 喘息治療は"何をしても症状がない"を目指すことができるところまで進歩しています。目標に届いていない方は、ぜひ一度、かかりつけの先生に相談してほしいと思います。

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