喘息(ぜんそく)の正しい知識と治療についての総合サイト

監修:国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王病院アレルギー内科 足立 満 先生

INTERVIEW 専門の先生に聞いてみました。

【第1回】喘息の「誤解」をなくし、症状ゼロを目指しましょう

足立 満 先生 国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王病院アレルギー内科

コメンテーター

足立 満 先生
国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授/山王病院アレルギー内科

「症状ゼロは決して夢ではない」。
多くの患者さんとともに治療に取り組み、
症状ゼロを目指す方法を
自ら実践してこられた足立先生に、
お話を伺いました。

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喘息について誤解していませんか?

「喘息だから、咳が出るのは当たり前。ゼーゼーするのは当たり前。」
あなたはこのように思っていませんか?
咳が出ることが当たり前になって、ご自分の症状に合わせて生活している喘息患者さんがたくさんいらっしゃいます。でも本当に、症状があることは仕方がないことなのでしょうか。また、症状が出たときに発作を止める薬(発作治療薬)で症状がしずまれば良いと思われている方もいらっしゃいますが、これが喘息を改善している状態なのでしょうか?
これらは喘息に対する大きな「誤解」です。
多くの方は喘息を患っていなくても、「喘息」という言葉や、大体の症状についてはご存じだと思います。にもかかわらず、喘息の治療について、このような「誤解」が多く残っています。
なぜ「誤解」が生じるのか、喘息はどのように治療し、どこまでよくすることができるのか。
喘息治療の歴史とともに、お話します。

喘息の患者さんは日本にどれくらい居る?

日本には約500万人もの患者さんが「喘息」と診断され治療を受けています。
4分の1が小児の患者さん、4分の3が成人の患者さんになります。
喘息の患者さんは昔と比べて増えています。アレルゲンとなる物質が昔に比べて増えていることもありますが、密閉性の高い住宅となりダニやカビなどのアレルゲンが非常に高率に発生する状況になっていることも影響していると考えられています。また、我が国のように清潔すぎる環境に慣れてしまい、アレルギーになってしまう体質の人が増えているという説もあります。

「喘息だから咳が出るのは当たり前、ゼーゼーするのは当たり前」は誤解!
今は喘息の症状をゼロにできる時代です。

最新の喘息の治療指針(喘息予防・管理ガイドライン2012)には、喘息治療の目標、ゴールとして、次のようなことが挙げられています。

  • ○喘息症状が昼間も夜間もないこと
  • ○喘息により日常生活の活動が制限されないこと
  • ○呼吸の機能に異常がないこと
  • ○症状止め薬(発作治療薬)を使う必要がないこと
  • ○発作のために救急受診しなくてよいこと

つまり、きちんと治療をすれば、症状が全く起こらず、喘息が原因で様々なことを我慢することもなく、喘息でない人と同じような日常生活を送れるようになるということです。「喘息だから、咳が出るのは当たり前。ゼーゼーするのは当たり前。」これは大きな間違いなのです。
昔の喘息治療では、このゴールを達成することは容易ではありませんでした。
しかし今は喘息の原因が「炎症」であることがわかり、そしてこの「炎症」を抑えることができる「吸入ステロイド薬」という薬の登場が、喘息治療を大きく進歩させたのです。

私が「吸入ステロイド薬」の素晴らしさを知ったのは、一人のお子さんを治療した経験からでした。

私が喘息を専門とする医師になったころは、まだ喘息の原因や効果的な治療法がわかっておらず、喘息の外来には、症状を起こした患者さんがあふれ、ひどい発作を繰り返して亡くなられる患者さんも少なくありませんでした。医師になったばかりの私と同年代のサラリーマンの患者さん、女子高生時代から診ていた大学生の患者さん、入院中もご家族のことをいつも心配していた主婦の患者さんなど、喘息で命を落とされた患者さんのことは、今でも忘れられません。

昔、私がある病院で喘息患者さんを診察していると、外の待合室のほうからいきなり「ギャー」と子供の泣き叫ぶ声が聞こえてきたことがありました。慌てて飛んでいくと、呼吸が止まってしまったところでした。すぐにその場で人工呼吸したので呼吸は戻りましたが、とても驚いたことがあります。その子のカルテをみると、とても重症の喘息で、当時使えた薬をほとんど使っていたにも関わらず、1年の3分の2 は入院し、呼吸が止まって気道に管をいれたことも数回あるという状態でした。4歳で体重は10kgしかありませんでした。

なんとかしてあげたいと思いました。使っていない薬は吸入ステロイド薬だけだったので、私は手作りのスペーサー(吸入補助具)とともに吸入ステロイド薬を使うことにしました。1ヶ月くらい吸入を続けたところ、症状はみるみるよくなり、その後、全く発作を起こすことはなくなり、飲み薬のステロイドもやめることができました。この効果には、私自身本当に驚きました。「子供でこれだけ効くのだから、大人にも効かないはずはない。」と思い、大人の患者さんにも吸入ステロイド薬を使い始めました。結果、次々に吸入ステロイド薬の効果を感じることができました。
でも、当時日本で吸入ステロイド薬を使っている医師はほんのわずか。学会で「吸入ステロイド薬は喘息治療に効果がある」と講演しても、ほとんど信用してもらえませんでした。誰もが吸入ステロイド薬を喘息の基本薬と考えている現在からは考えられないことですね。

それから徐々に吸入ステロイド薬を使う先生が増えていき、吸入ステロイド薬の種類もすごく増えました。現在では、長時間効果の続く気管支拡張薬との配合剤も登場し、吸入器も使いやすい形となっています。今の患者さん、医師は昔と比べると恵まれているなと感じています。
ちなみに、私に吸入ステロイド薬の素晴らしさを教えてくれた、お子さんですが、その後、すっかり元気になられ、就職して背広姿でご挨拶に来られたときには、「あれ、誰だったかな・・・」と、すぐにはわからないほど成長されていました。今も元気に過ごされています。

喘息治療は進歩し、新しい優れた薬剤が次々と生まれています。

現在、なぜ吸入ステロイド薬が喘息治療の基本の薬となっているのでしょうか?
その理由は、喘息の原因が「気道の炎症」であることと深く関係しています。

喘息の患者さんの気道には、症状が何もないときにも、炎症が起きています。この炎症のために、わずかな刺激にも気道が反応して、気道が狭くなり、咳、ゼーゼーヒューヒュー、痰などの症状が起こるのです。

この炎症を効果的におさえる薬が吸入ステロイド薬です。
吸入ステロイド薬は、直接気道に薬が届いて炎症をおさえます。また、使う量が飲み薬のステロイド薬よりずっと少量ですむため、飲み薬にみられるような副作用はほとんどありません。
欠点は、すぐには効果を実感できないことです。そのため、本当は継続して使用しないといけないのに、途中でやめてしまう患者さんがいます。このような患者さんは、気道の炎症が治まっていないので、風邪をひいたり、季節の変わり目などに発作を起こし、来院することがしばしばあります。

近年、炎症をおさえる吸入ステロイド薬と、長時間効果の続く気管支拡張薬が1つになった配合剤が使えるようになりました。患者さんにとっては、気管支を広げる薬が一緒に入っているので効果を実感しやすくなり、また2 つの吸入薬を別々に吸う必要がなく、1 つの吸入器で済みますので、お薬を続けやすくなります。こうした吸入薬をうまく使っていけば、症状がなく、喘息が原因でいろいろなことを我慢することがない生活が実現する事が期待されます。

吸入ステロイド薬と気管支拡張薬の配合薬の説明

かかりつけの医師と一緒に、「症状ゼロ」の毎日を目指しましょう。

喘息の治療は、吸入ステロイド薬や、吸入ステロイド薬と気管支拡張薬の配合剤によって大きく進歩し、きちんと治療すれば、症状をゼロにできる病気になりました。

「症状ゼロ」を目指した治療をしていくためには、まず、みなさんが現在のご自身の症状を見直し、その状態をかかりつけの医師に伝えて相談し、一緒に治療を見直していくことが大切です。

このサイトには、簡単に今の喘息の状態をチェックすることができる「症状クイックチェック」があります。実施し、結果をかかりつけのお医者さんに伝えてみましょう。

症状ゼロの毎日を目指して。一緒に、頑張りましょう。

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